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毎月 5 名様

「ホッとできる場所」を提供し続けて四半世紀
神田神保町の心休まる画廊喫茶
【珈琲舎 蔵】

知が集う神田神保町で個性を放つ喫茶店

神田神保町は約200軒の古書店が集積する、世界屈指のカルチェ・ラタンである。ランドマークの三省堂本店、書泉、東京堂書店を母艦に例えると、学術書や稀覯本などを取り扱う専門店は駆逐艦、巡洋艦、潜水艦。街全体が“知の船団”を組む集合体のように共存している。同様に喫茶店も、老舗4店舗(「茶房きゃんどる」「ラドリオ」「さぼうる」「ミロンガヌオーバ」)を筆頭に、数多の店舗がそれぞれ個性を放つ。

四半世紀以上前から本好きに癒しを提供する「珈琲舎 蔵」

神保町駅から徒歩5分の裏道にある「珈琲舎 蔵」は、1993(平成5)年の開業から四半世紀以上の歴史を刻んできた。壁面に飾った洋画家・舟木誠一郎が画いた油彩が「ホッとできる場所」と喫茶店の理想を語る店主の想いを象徴している。

絵画が印象的な店内

―絵画がお店の雰囲気を支配していますね。

元・白日会会員の舟木さんが展覧会用に画いた油彩の『沈黙』(120号)と『人魚』(80号)です。彼は「絵画は鑑賞されて価値がある」と自分の作品の行き場所を探していました。三十年来のお付き合いの関係もあって飾ることになりました。

親しみある神保町と一目惚れした物件が出店を後押し

―神保町に出店された経緯は。

会社員時代の勤務地でした。学生時代に喫茶店でアルバイトを経験し、またコーヒーのコンサルタント的な仕事に就いた関係もあって、いつかお店を持ちたいと夢を持っていました。ここの物件は一目見て気に入りました。

信念を貫いたコーヒーと空間づくり

―コーヒーの抽出はメリタ式ですね。

開店当初から陶器製フィルターを使用しています。カウンター越しに珈琲をたてることは、ある種のパフォーマンス、演出効果です。それを踏まえた時、抽出液が落ちてくるさまは一筋の滴が格好いい。当然布ドリップも考えましたが、管理を含めるとペーパードリップが一番扱い易いです。珈琲豆は、知り合いの小さな焙煎屋さんから仕入れています。ブレンドはコロンビアをベース(7割) にキューバ、ホンジュラスを配合しています。自家焙煎を考えなかったわけではありません。でも友人からは「なにがやりたいのか、一つ信念を持たないと続かない」と云われていました。焙煎し接客して抽出まで全てやるのは途轍もなく大変です。私の場合、お客さんにゆったりとした時間を過ごして頂きたくて、当初からくつろげる空間の提供に努めてきました。

古本探しの目利きと似た個性を魅了させる喫茶店経営

―この界隈は喫茶店の激戦区ですね。

老舗が多く、喫茶店文化が浸透した街ですし、需要も多いですね。その延長線上にカフェがあって、現在はコーヒーブームが押し寄せています。ただ、喫茶を含め飲食店は、昔みたいな万人向きの取り組みは今の時代には通用しません。その役割はファミリーレストランに任せ、極端な特化ではなく個性を出していかないと経営は難しいです。近年ではカレーショップやラーメン店が増えました。「飲食店は神保町でやれればどこででも通用する」といわれ、最近はパイロットショップの出店が目立ちます。神保町に来る人は舌の肥えたお客さんが多いですし、それは味であったり値段であったり。古本探しの目利きと似ています。

―神保町の魅力について。

何かを提供してくれる繁華街とは異なり、自分なりにアンテナを張っていると想像以上の発見に出合える、宝箱のような街です。

「大坊珈琲店」のような一呼吸置ける空間をこれからも

―喫茶店の理想像について。

喫茶店は『ホッとする場所』であるということを無意識に感じていたのだと思います。大坊勝次さんの最近の書籍にあった、この一節に目がとまってアッと気付きました。私が一番の拠り所としていることを単刀直入に表現されていました。「ホッとできる場所」には色々な要素が含まれます。珈琲はある程度のレベルでなければいけないし、店内の環境もそうですが、全てにおいて「ホッとできる場所」が喫茶店なのだと思います。喫茶店はその時代時代を反映していると捉える方もおられますが、当店は時間が止まっているような、お客さんに一呼吸置いて頂けるような空間を提供し続けていきたいです。

―大坊さんも来店されるそうですね。

偶にお見えになります。青山にあった大坊珈琲店には、洋画家の牧野邦夫さんの油彩「大坊珈琲店の午后」が飾ってありました。実は舟木さんは牧野さんに傾倒されており、その関係から大坊さんと繋がりが出来ました。大坊さんと出逢って、珈琲や喫茶店に対する考え方に一歩踏み込むことが出来ました。絵画や文学にも造詣が深く尊敬しています。

memo 取材メモ

漢字の書体には、楷書、行書などあるが、『珈琲舎 蔵』は隷書である。隷書体の代表例は日本銀行券の活字。また印鑑にも多用されており、「はっきり」「くっきり」とした印影に適しているのだ。隷書にこだわった店主の心情はそのままお店の経営方針に反映されている。舟木誠一郎氏は小学生時代の同級生。同窓会で久々に再会して親交を深めることになった。油彩やデッサンを飾った店内に静謐さが漂う。都会の喧騒から自分を取り戻すオアシスのようなお店だ。

珈琲舎 蔵

珈琲舎 蔵

所在地
東京都千代田区神田神保町1-26 矢崎ビル2F
電話番号
03-3291-3323
営業時間
平日11~20時/土曜12~17時
定休日
祭日
席数
約25席